不動産投資を始めたばかりの方や、すでに収益を得ている投資家の中には「法人化すべきかどうか?」と悩んでいる方も多いでしょう。
法人化には節税メリットや経費計上の自由度が高まるという利点がありますが、一方でコストや手間、税金の負担が増える可能性もあります。
本記事では、不動産投資で「法人化しない理由」について詳しく解説し、個人投資のメリット・デメリットを比較します。
法人化を検討している方は、この記事を参考に最適な判断をしてください。
不動産投資で法人化しない6つの理由
不動産投資を法人化することで節税や経費計上の幅が広がる一方で、必ずしも全ての投資家にとって最適な選択とは限りません。ここでは、法人化しない方が良いとされる6つの理由を詳しく解説します。
理由① 会社設立の手間とコストがかかる
法人化するためには会社を設立する必要がありますが、その際の手続きには多くの手間がかかります。また、設立時と運営時にかかるコストも無視できません。
法人設立にかかる主な費用
項目 | 費用相場 |
---|---|
登録免許税 | 約15万円 |
定款認証手数料 | 約5万円 |
司法書士報酬 | 約5万〜10万円 |
法人印鑑作成費 | 約1万円 |
合計 | 約26万〜31万円 |
さらに、法人を維持するためには、税理士費用や決算書作成費用も発生します。手続きの煩雑さを考えると、一定規模以上の投資でなければ個人のままの方が手軽です。
理由② 赤字でも法人住民税がかかる
法人は赤字であっても最低7万円の法人住民税を毎年支払わなければなりません。
個人 vs 法人の住民税の比較
項目 | 個人投資 | 法人投資 |
---|---|---|
住民税 | 所得に応じて課税 | 赤字でも年間7万円以上 |
確定申告 | 必要 | 法人税申告が必要(手間が増える) |
小規模な投資やまだ収益が安定していない場合は、法人化するとコストがかえって負担になる可能性があります。
理由③ 金融機関の融資が受けにくくなる
法人化すると、個人でローンを組むよりも融資の審査が厳しくなることがあります。特に、設立したばかりの法人では「決算実績がない」と判断され、銀行からの融資を受けにくくなるケースが多いです。
個人 vs 法人の融資の違い
項目 | 個人 | 法人 |
---|---|---|
審査の厳しさ | 比較的通りやすい | 実績が必要で厳しい |
必要な決算書 | 不要 | 2期以上の決算実績が求められることが多い |
不動産投資の規模がまだ小さいうちは、個人の方が融資を受けやすく、法人化するとかえって不利になることもあります。
理由④ 不動産所得の金額次第では法人化のメリットが少ない
法人化は、一定以上の不動産所得がなければ節税メリットを得られません。一般的に、年間1,000万円以上の所得がある場合に法人化が有利と言われています。
理由⑤ 法人化すると出口戦略(売却時)で不利になる
不動産を売却する際、個人投資では所有期間が5年以上であれば譲渡所得税が軽減されますが、法人の場合はこの特例がありません。
譲渡所得税の違い(売却益1,000万円の場合)
項目 | 個人(5年以上所有) | 法人 |
---|---|---|
税率 | 20.315% | 30〜35% |
税額 | 約203万円 | 約300〜350万円 |
売却を前提とした投資を考えている場合は、個人投資の方が税負担を抑えられる可能性が高いです。
理由⑥ 法人の税務処理が複雑で手間が増える
法人化すると、個人の確定申告よりもはるかに複雑な法人税申告を行う必要があります。税理士に依頼する場合、年間20〜30万円のコストが発生することもあります。
不動産投資で法人化しない6つの理由まとめ
以上の6つの理由から、不動産投資を法人化しない方が得策であるケースが多いことが分かります。
✅ 小規模投資なら設立コスト・維持費が割に合わない
✅ 法人化すると融資が受けにくくなる可能性がある
✅ 不動産所得1,000万円以下なら節税メリットが少ない
✅ 売却時の税金が高くなるため、出口戦略が不利
法人化は決して「節税のために必須」というわけではありません。ご自身の投資規模や目的に合わせて、慎重に検討することが重要です。