本記事では、不動産投資における経費の考え方や、節税につながるポイントについて詳しく解説します。
不動産投資で安定した収益を得るためには、家賃収入を増やすだけでなく、税金の負担を適切に抑えることも重要です。
しかし、経費として認められる範囲が分からず、本来受けられる節税効果を十分に活かせていない方は少なくありません。
また、経費として認められない支出を計上したり、必要な経費を漏らしたりすると、税務上のトラブルや余計な税負担につながる可能性があります。
そこで今回は、不動産投資で経費として認められるもの・認められないものの違いや、節税の仕組みについて分かりやすく説明します。
これから不動産投資を始める方はもちろん、すでに物件を所有している方も、ぜひ最後までご覧ください。
不動産投資の経費とは?
不動産投資における経費とは、賃貸経営を維持・継続し、家賃収入などを得るために必要となる費用のことです。
所得税や住民税は、「家賃収入などの収入から経費を差し引いた不動産所得」に課税されるため、経費を適切に計上することで節税につながります。
ただし、すべての支出を経費にできるわけではなく、家賃収入を得るために必要な支出と認められるものだけが対象となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 不動産所得の計算式 | 不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費 ※青色申告の場合は、さらに 青色申告特別控除額 を差し引く |
| 計算例 | 年間家賃収入:200万円 必要経費:150万円 不動産所得:50万円(200万円 − 150万円) |
| 経費計上のポイント | 経費を適切に計上することで不動産所得が減り、所得税・住民税の節税効果が生まれる |
| 注意点 | 経費漏れがあると不動産所得が増え、本来より多くの税金を支払う可能性がある |
| 赤字になった場合 | 不動産所得が赤字の場合、一定の要件のもとで 給与所得など他の所得と損益通算が可能 |
参考情報:国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
不動産投資で経費として認められる12の費用項目
不動産投資の経費として認められる費用は多岐にわたります。
ここでは、確定申告の実務でよく使われる代表的な12の経費項目を、具体例を交えながら一つずつ確認していきましょう。
租税公課
不動産投資の事業に関連して発生する税金は「租税公課」として経費にできます。
対象となるのは、所有している物件にかかる固定資産税や都市計画税、物件購入時の不動産取得税や登録免許税、契約書に貼る印紙税などです。
ただし、所得税や住民税など個人にかかる税金や、遅延による延滞税などは経費になりませんので注意しましょう。
参考情報:国税庁「No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合」
減価償却費
減価償却費とは、建物や設備といった資産の取得にかかった費用を、法定耐用年数にわたって少しずつ費用として計上していく仕組みです。
土地は時間が経過しても価値が減少しないため減価償却の対象外ですが、建物やエアコン・給湯設備などの附属設備は減価償却資産として扱われます。
減価償却費の大きな特徴は、実際の現金支出を伴わないにもかかわらず帳簿上の経費として計上できる点にあります。
そのため、不動産投資における代表的な節税方法として活用されていますが、耐用年数の終了後は減価償却費を計上できない点に注意が必要です。
不動産ローンの支払利息
金融機関から借り入れて不動産を購入した場合、その借入金にかかる利息部分は必要経費として計上できます。
ただし経費にできるのはあくまで利息の部分のみで、元本の返済分は経費に含まれません。
借入金は会計上「負債」として扱われるため、元本を返済しても「負債が減った」だけであり、収益に対応する費用とはみなされないためです。
なお、土地の取得にあてた借入金の利息については、不動産所得が赤字の場合の損益通算に一定の制限が設けられています。
管理費・管理委託料
マンションやアパートの管理を管理会社へ委託している場合に支払う管理委託料は、不動産所得の必要経費として計上できます。
また、区分所有マンションを賃貸している場合に貸主が負担する管理費も、必要経費の対象です。
一方、修繕積立金については、税務上の取り扱いが管理費とは異なります。
。一定の条件を満たす場合は支払時に経費計上できますが、そうでない場合は修繕工事に充てられた時点で経費となるため、取り扱いには注意しましょう。
修繕費
賃貸物件の原状回復やメンテナンスのために支出した費用は、修繕費として全額をその年の経費に計上できます。
退去後のクロス張替えや設備の小規模な修理、外壁の部分補修などが代表例です。
なお、資産の価値を高めたり耐用年数を延ばしたりするような大規模な工事は「資本的支出」とみなされ、修繕費として一括計上できない場合があります。
損害保険料
賃貸物件の火災保険や地震保険の保険料は、必要経費として計上できます。
ただし、保険期間が1年を超える長期契約の場合、支払った全額をその年の経費にはできません。
保険期間に応じて各年分に按分し、未経過分は翌年以降の経費として処理します。
仲介手数料・広告宣伝費
入居者を募集する際に不動産会社へ支払う仲介手数料や広告掲載料、契約更新時の事務手数料などは、必要経費として計上できます。
さらに、入居者募集のために利用するポータルサイトの掲載料も、必要経費として扱われます。
また、空室対策として導入するインターネット無料化サービスの費用も、経費の対象です。
旅費交通費
所有物件の管理や確認のための現地訪問、不動産会社との打ち合わせ、セミナー参加などでかかった交通費や宿泊費も必要経費となります。
ただし、家族旅行を兼ねた出張など、私的な要素が含まれる場合は、業務に関係する費用のみが経費の対象です。
業務と私用が混在する場合は、合理的に按分して計上しましょう。
通信費・新聞図書費
物件管理のために使用する電話代やインターネット利用料の一部は、通信費として経費計上が可能です。
また、不動産投資や税務に関する書籍・新聞・専門誌の購読費用も、新聞図書費として経費の対象となります。
なお、自宅の回線を私用と兼用している場合は、使用割合に応じて家事按分を行いましょう。
不動産会社や税理士との接待交際費
不動産会社や管理会社、金融機関の担当者、税理士など、不動産投資に関わる関係者との飲食代や打ち合わせ費用は、接待交際費として経費計上できます。
しかし、経費として認められるのは、事業に直接関係する相手との打ち合わせなどに限られます。
誰と、どのような目的で利用したのかを、領収書の裏などにメモしておくと安心です。
税理士・司法書士・弁護士等への専門家報酬
確定申告を税理士に依頼した際の報酬や、物件購入時に登記手続きを依頼した司法書士への報酬は、必要経費となります。
また、入居者とのトラブル解決を弁護士に依頼した際の相談料も、経費の対象です。
これらは、不動産投資を円滑に進めるために必要な専門的サービスへの対価であるため、必要経費として認められます。
その他の経費(消耗品費、雑費、専従者給与など)
不動産投資の業務で使用するパソコンやカメラ、文房具などの購入費用は、消耗品費として経費にできます。(10万円未満、または税制上の特例要件を満たすもの)
また、事業を家族で手伝っている場合に支払う青色事業専従者給与も、経費の対象です。
さらに、ほかの勘定科目に分類しにくい少額の支出は、雑費として計上できます。
不動産投資の経費にできないもの一覧
不動産投資において、手当たり次第に領収書を経費にしてしまうと、税務調査で否認されて追徴課税を受けるリスクが生じます。
ここでは、経費として認められない主な費用項目について詳しく解説します。
土地の取得費・ローンの元本返済分
土地は減価償却の対象外であるため、土地そのものの取得費用を経費にはできません。
同様に、建物購入のためのローンであっても、返済額のうち元本部分は経費にできず、利息部分のみが経費として認められます。
元本返済分を経費に含めてしまうと、借りれば借りるほど経費が膨らむ不自然な計算になってしまうため、税務上は明確に区別されています。
所得税・住民税など個人に課される税金、罰金
所得税や住民税、相続税などの個人に課される税金は、必要経費の対象外です。
交通反則金や罰金、科料、過料についても、税務上は経費として扱われません。
申告時は経費にできる支出と区別して計上しましょう。
プライベート利用分(家族旅行・私的な食事等)
不動産投資とは無関係な家族旅行の費用や、私的な外食・買い物などの支出は、経費にはできません。
事業用とプライベート用の支出が混在している場合は、不動産投資のために使用した部分を合理的な基準で按分する必要があります。
経費として計上できるのは、その按分した事業利用分に限られます。
資格取得費用
宅地建物取引士やマンション管理士、ファイナンシャルプランナーなど、不動産投資に役立つ資格の取得費用は、原則として必要経費の対象外です。
これらは個人のスキルアップや自己投資としての性格が強いと考えられているためです。
ただし、法人化しており、業務上必要な資格を役員や従業員に取得させる場合は、研修費などとして法人の経費に計上できるケースがあります。
資本的支出とみなされる高額リフォーム
建物の価値を高めたり、耐用年数を延ばしたりするリフォームは、修繕費として一括で経費計上することはできません。
このような支出は「資本的支出」として資産計上し、減価償却によって複数年にわたり費用化します。
国税庁の通達では、以下に記載した表のような支出が資本的支出に該当する代表例として挙げられています。
| 区分 | 内容 | 具体例・ポイント |
|---|---|---|
| 建物の物理的な付加 | 既存建物に新たな構造物を追加し、価値や耐用年数を高める支出 | ・避難階段の新設 ・増築部分の工事費 ※建物の機能向上・安全性向上が目的 |
| 用途変更を目的とした改造・改装 | 部屋の用途や機能を変更し、建物価値を高める支出 | ・和室→洋室への変更 ・間取り変更(壁の撤去・新設) ※単なる修繕ではなく「価値向上」がポイント |
| 通常グレードを超える設備の交換 | 性能向上を伴う設備入れ替えで、従来より高いグレードになる部分の費用 | ・アルミサッシへの交換(性能向上分) ・高性能給湯器・断熱材への交換 ※「性能向上分」が資本的支出として扱われる |
こうした工事は見た目には修繕に見えても、税務上は資産の価値向上とみなされるため、一括での経費計上はできない点に注意が必要です。
不動産投資の経費で判断に迷いやすい3つのポイント
経費の項目自体は理解できても、実際の金額や状況によっては「経費になるのかどうか」の判断が難しいケースが少なくありません。
本章では、不動産投資家が特につまずきやすい3つを、具体的な基準とともに解説します。
修繕費と資本的支出の判定基準
修繕費と資本的支出の判定には国税庁の金額基準が使われます。
1回の修理・改良費が 20万円未満、または 3年以内の周期で行う修理 は修繕費としての処理が可能です。
これに当てはまらない場合でも、区分が明確でない支出については 60万円未満 、または 前年末の取得価額の10%以下 であれば修繕費として認められます。
さらに判断が難しい場合は、支出額の 30% と前年末の取得価額に対する 10% のいずれか少ない金額を修繕費とし、残りを資本的支出とする特例もあります。
ただし、これらの数値基準が適用されるのは、修繕費と資本的支出の区分が明らかでない場合のみです。
増築や用途変更など、建物の価値や耐用年数を明らかに高める工事には適用されないため、注意しましょう。
| 判定区分 | 基準内容 | 修繕費として認められるケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 少額・周期性の基準 | ・1回の修理費が 20万円未満 ・3年以内の周期で行う修理 | ・軽微な修理 ・定期的なメンテナンス | 明確に修繕費として扱える |
| ② 区分が明確でない場合の金額基準 | ・60万円未満 ・前年末取得価額の 10%以下 | ・判断が難しい支出のうち、上記基準内の金額 | 「区分が明らかでない金額」に限定 |
| ③ 特例的な按分方法 | ・支出額の 30% と前年末取得価額の 10% の少ない方を修繕費とする | ・どの基準にも当てはまらない曖昧な支出 | 残額は資本的支出として処理 |
| ④ 適用不可のケース(明確な資本的支出) | ・増築 ・用途変更(和室→洋室など) ・性能向上を伴う設備交換 | ・資産価値を高める支出は全額資本的支出 | 数値基準は一切適用不可 |
参考情報:国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」
土地部分の借入金利息と損益通算の制限
不動産所得が赤字になった場合、給与所得など他の黒字所得と相殺できる「損益通算」が利用できます。
しかし、すべての赤字を相殺できるわけではありません。
土地の取得にあてた借入金利子は、租税特別措置法により損益通算の対象外とされているためです。
なお、土地と建物を同時にローンで購入した場合、借入金はまず建物の購入代金に優先して充てられたとみなして計算します。
たとえば、フルローンで6,000万円(建物2,500万円・土地3,500万円)を借り、年間利子240万円を支払う場合で考えてみます。
| 項目 | 内容 | 補足・ポイント |
|---|---|---|
| 計算例:借入金6,000万円 | ・建物:2,500万円 ・土地:3,500万円 ・年間利子:240万円 | 土地比率:3,500万 ÷ 6,000万 ≒ 58% |
| 土地分の利息 | 240万円 × 58% ≒ 140万円(損益通算不可) | この140万円は切り捨て扱い |
| 損益通算できる赤字額 | ・赤字 140万円以下 → 損益通算不可 ・赤字 140万円超 → 超過部分のみ損益通算可能 | 赤字が大きくても土地利息分は控除できない |
| 実務上の注意点 | 土地比率が高い物件ほど損益通算の制限が大きくなる | 頭金・借入比率を含めた資金計画が重要 |
こちらのケースでは、建物分に2,500万円が充てられ、残る3,500万円(全体の約58%)が土地分となるため、対象外となる利子はおよそ140万円です。
この場合、不動産所得の赤字が140万円以下であれば損益通算は一切できず、140万円を超えた部分のみが対象になります。
土地比率が高い物件を選ぶ際は、頭金の額も含めて綿密な資金計画を立てましょう。
家事按分の具体的な計算方法
自宅の一部を賃貸経営の事務作業に使用している場合や、通信費・車両費などを事業と私用で兼用している場合は、「家事按分」の考え方を用います。
家事按分の代表的な計算方法は、使用時間や使用面積の割合に基づくものです。
たとえば自宅の一室を賃貸管理の作業スペースとして使っている場合、その部屋の床面積が住居全体の何割を占めるかで按分割合を算出します。
車両を賃貸物件の巡回と私用の両方に使っている場合は、走行距離や使用日数の割合で按分するのが一般的です。
按分の根拠は税務調査で説明を求められることがあるため、走行記録や使用時間のメモなど、算出根拠を残しておくことをおすすめします。
自宅(家賃月10万円・40㎡)のうち、4㎡の書斎スペースを週に2日(日数の約30%)、物件管理の事務作業に使っているケース。
- 面積の割合:4㎡ ÷ 40㎡ = 10%
- 家賃の経費算入額:月10万円 × 10% = 月1万円
- 電気代などの経費算入額:電気代月1万円 × 面積10% × 日数30% ≒ 月300円
不動産投資の経費を活用した節税の仕組み
不動産投資では、経費を正しく計上することで所得税・住民税の負担を軽減できる複数の仕組みが用意されています。
ここでは代表的な3つの節税ポイントについて、その効果と注意点をあわせて解説します。
損益通算による所得税還付の仕組み
不動産所得が赤字になった場合、他の所得と相殺して税金を減らせる「損益通算」という仕組みが利用できます。
この仕組みを使うことで、給与から源泉徴収された所得税の一部が還付される可能性があります。
特に不動産投資の初年度は経費が多くなりやすく赤字傾向になるため、この節税効果を最も実感しやすい時期です。
ただし、前述した通り「土地等を取得するための借入金の利子」に相当する赤字部分は損益通算の対象外となる点には注意しましょう。
青色申告特別控除(最大65万円)の活用
青色申告を行うことで、不動産所得から最大65万円(要件を満たさない場合は55万円)を控除できる「青色申告特別控除」が利用できます。
最大65万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳と、確定申告書への貸借対照表および損益計算書の添付が必要です。
その上で、e-Taxによる電子申告、または一定の要件を満たす電子帳簿保存のいずれかを行う必要があります。
なお、55万円や65万円の大きな控除を受けるには、不動産所得が「事業的規模」に達していなければなりません。
一般的にはアパートなら独立した部屋数が10室以上、戸建てなら5棟以上が事業的規模の目安です。
この基準に満たない小規模な不動産投資の場合は、青色申告特別控除は一律で10万円が上限となります。
| 項目 | 内容 | 補足・ポイント |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除の控除額 | 最大 65万円(要件未達の場合は 55万円) | 不動産所得から控除できる |
| 65万円控除の要件 | ・複式簿記で記帳 ・貸借対照表・損益計算書の添付 ・e-Taxで電子申告 または 電子帳簿保存の要件を満たす | いずれも満たす必要あり |
| 55万円控除の要件 | ・複式簿記で記帳 ・貸借対照表・損益計算書の添付 ・紙で申告(電子申告なし) | 電子申告をしない場合の上限 |
| 事業的規模の要件 | ・アパート:おおむね10室以上 ・戸建て:おおむね5棟以上 | 55万円・65万円控除の前提条件 |
| 小規模の場合の控除額 | 事業的規模に満たない場合は 一律10万円 | ワンルーム投資などはここに該当 |
減価償却を使った節税効果と「デッドクロス」の注意点
減価償却費は実際の現金支出を伴わずに経費計上できるため、不動産投資における代表的な節税手段として広く活用されています。
しかし、この仕組みには「デッドクロス」と呼ばれる、投資の資金繰りを悪化させる特有の注意点が存在します。
デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回ってしまい、手元の現金が急速に減少していく状態のことです。
元金返済は経費にできないため、両者のバランスが崩れると手残りは増えないのに帳簿上の利益と税負担だけが重くなります。
特に法定耐用年数の短い中古の木造物件などは、減価償却期間が短いためにデッドクロスが早く訪れやすい傾向があります。
そのため、返済期間や返済方法、借入額などを事前に十分検討し、デッドクロスが起こる時期を見据えた無理のない資金計画を立てることが重要です。
不動産投資の確定申告と経費計上の実務ポイント
実際に不動産投資の経費を計上し、確定申告を滞りなく進めるためには、いくつかの手続き上のルールや実務のポイントを押さえる必要があります。
直前になって慌てないよう、年間を通じて正しい記録と保存の習慣を身につけておくことが大切です。
白色申告と青色申告の違い・必要書類
白色申告は事前の届出が不要で簡易な記帳で済む反面、最大65万円の特別控除など青色申告のような手厚い税制優遇は一切受けられません。
一方で青色申告は、事前に承認申請書を提出する手間や複式簿記による正確な記帳が必要ですが、それを補って余りある多くの税制優遇を受けられます。
そのため、不動産投資で高い節税効果を得て手元の現金を効率よく残したいと考えている場合は、青色申告への切り替えを検討するとよいでしょう。
なお、青色申告を選ぶには、賃貸経営を開始した日から原則2か月以内に、管轄の税務署へ承認申請書を提出しなければならないため注意が必要です。
記帳の手間というデメリットと節税効果のメリットを天秤にかけ、自身の投資規模や経営スタイルに合わせた最適な申告方法を選びましょう。
初年度の確定申告で経費が多くなる理由
不動産投資を始めた初年度は、他の年に比べて経費が多くなる傾向があります。
これは不動産取得税や登録免許税、仲介手数料、ローン事務手数料など、物件の取得に伴う様々な初期費用が購入時にまとめて発生するためです。
また、初期費用の多くはその年の経費になるため不動産所得が赤字になりやすく、給与所得との損益通算によって税金の還付を受けられるケースも多くなります。
ただし、土地や建物の購入代金など、経費にできず資産計上すべきものも混在するため、項目ごとの慎重な区分が欠かせません。
初年度特有の経費を正しく理解し、確実な申告で手元に現金を残しましょう。
領収書・証憑書類の保存タイミング
不動産投資の経費を確定申告する際、領収書やレシート、請求書などの証憑書類は、申告書と一緒に税務署へ提出する必要はありません。
ただし、青色申告の場合は原則7年間、白色申告の場合は原則5年間の保存が法律で義務付けられています。
保存期間中は税務調査などで提示を求められる可能性があるため、必要な書類をいつでも確認できる状態にしておくことが大切です。
そのため、領収書や請求書は月別や費目別に整理して保管しておくと、確定申告の準備や税務調査への対応がスムーズになります。
また、近年では電子帳簿保存法の要件を満たすことで、領収書や請求書を電子データとして保存する方法も広く活用されています。
個人と法人で不動産投資の経費はどう変わる?
不動産投資の規模が大きくなってくると、個人のまま所得税で申告するか、法人を設立して法人税で申告するかという選択肢が出てきます。
ここでは、個人と法人で経費の範囲がどのように変わるのか、そして法人化を検討すべきタイミングについて解説します。
個人(所得税)と法人(法人税)での経費範囲の違い
個人の不動産投資では、所得税法に基づき、不動産所得を得るために必要な支出が経費として認められます。
一方、法人では事業との関連性が認められる支出を損金に算入できるため、経費計上の選択肢が広がります。
契約内容に応じた生命保険料の一部や、一定の要件を満たした出張手当、役員退職金などが代表例です。
また、個人には超過累進課税が適用されますが、法人には異なる税率体系が採用されているため、所得水準によっては節税効果が期待できます。
法人化には設立費用や維持コストもかかるため、投資規模や収益状況に応じて最適なタイミングを検討しましょう。
役員報酬・社宅家賃など法人ならではの経費
法人化すると、適正な役員報酬を支給することで、会社の損金として計上できる場合があります。
また、一定の要件を満たした社宅制度を導入すれば、会社が負担する家賃の一部を損金として計上することが可能です。
さらに、契約内容に応じた生命保険料の一部の損金算入や、役員退職金制度の活用も法人ならではのメリットです。
これらの制度を適切に活用することで、税負担の軽減や資金繰りの改善につながります。
法人化を検討する際は、投資規模や収益状況、維持コストなどを総合的に考慮し、最適なタイミングを判断しましょう。
法人化を検討すべき規模・タイミングの目安
個人と法人のどちらを選ぶかは、課税所得や物件の保有規模が重要な判断材料です。
一般的には、課税所得が900万円前後になると、個人の税負担が重くなり始めるため、法人化を検討するケースが増える傾向にあります。
この水準では、所得状況や将来の事業計画によって、法人化による節税効果や資産形成上のメリットが期待できます。
また、不動産賃貸業が事業的規模に達している場合や、金融機関からの融資を有利に進めたい場合も、法人化が有力な選択肢です。
ただし、法人化には設立費用や毎年の維持コストもかかるため、税理士などの専門家に相談しながら、自身に合ったタイミングを判断するとよいでしょう。
不動産投資の経費に関するよくある質問(Q&A)
最後に、不動産投資の経費についてよく寄せられる質問をまとめました。
実務で迷いやすい細かな疑問を、Q&A形式で確認しておきましょう。
- サラリーマン(給与所得者)でも経費計上できる?
-
はい、サラリーマンが副業として不動産投資を行う場合でも、必要経費を計上して確定申告を行うことができます。
不動産所得が赤字となり、損益通算の要件を満たす場合は、給与所得と合算して税負担を軽減できる可能性があります。そのため、サラリーマン投資家こそ経費を正しく理解し、日頃から適切に管理することが大切です。
- 経費の証拠書類(領収書等)がない場合はどうする?
-
領収書やレシートを紛失した場合でも、銀行の振込履歴やクレジットカードの利用明細などにより、支払いの事実を確認できるケースがあります。
また、やむを得ない場合は、日付や金額、支払先などを記載した出金伝票を作成し、ほかの資料とあわせて保管する方法もあります。ただし、領収書や請求書を適切に保管しておくことが基本です。
- 税理士へ相談・依頼すべきタイミングは?
-
物件数が少なく取引も複雑でなければ、自分で確定申告を行うことも可能です。
しかし、5棟10室程度の事業的規模となった場合や、法人化を検討する場合、減価償却や資本的支出の判断に迷う場合は、税理士への相談をおすすめします。
まとめ:不動産投資の経費を正しく理解して賢く節税しよう
不動産投資で経費を適切に計上するためのポイント
- 判断に迷う場合は税理士などの専門家へ相談する
- 経費として認められる項目と認められない項目を正しく理解する
- 修繕費と資本的支出の違いなど、判断が難しい経費に注意する
- 青色申告特別控除や減価償却費を活用し、適切な節税につなげる
- デッドクロスを見据えた資金計画を立てる
今回は、不動産投資で経費として計上できる費用や、計上できない費用、節税につなげるポイントについて解説しました。
不動産投資では、経費を適切に計上することで課税対象となる不動産所得を抑え、税負担を軽減できる可能性があります。
一方で、土地の取得費やローンの元本返済、プライベートな支出などは経費にならないため、誤った計上は税務上のリスクにつながります。
制度の仕組みを正しく理解するとともに、必要に応じて税理士などの専門家にも相談しながら、長期的に安定した不動産投資と資産形成を目指しましょう。
なお、詳しくは当社でも融資や会計に関するご相談を受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。

